11月の初めに、高知市内で味噌作りのワークショップをさせて頂いたときのコラムです。
今月の思い出に。
「糀と味噌と」
小さい頃は、糀の作業場が遊び場でした。米麹を仕込む日は、木桶で蒸し上げた白米をひいばあちゃんがぎゅーっとにぎっては食べさせてくれました。もろみ糀の原料の炒った大豆を石臼で引き割る作業は、私も手伝わせてもらいながら大豆をポリポリ食べました。
糀づくりは、文政元年(1818年)に今の四万十町六反地に移り住んだ頃からと伝えられていますが、記録が残っていないので定かではありません。それでも、糀屋としては100年以上前から、味噌やもろみを売り始めたのは祖母の代からと聞いています。
糀も味噌も当たり前に家にあるものでした。冬になると、こたつの中には甘酒を仕込んだ容器が転がっていました。きっと、ひと昔前の家庭は、みんなこんな感じたっだのだろうと思います。各々の家で味噌や酒を仕込むから、各々の町に糀屋がありました。今では、お味噌は、簡単に、どこでも購入できるようになり、ご家庭の中から糀が消えたように、糀屋も年々減少し、県内でも数件を残すだけとなりました。
最近になって、塩麹ブームがあったり、発酵、菌活ブームがあったりして、全国的にも糀を使った調味料が見直されてきています。私も、地元や高知市内で味噌づくりのワークショップや糀を使った料理教室を開催し、手作りの楽しさ、おいしさを知ってもらい、健康な体づくりのお手伝いをしたいと思い活動しています。
そのような活動をするようになってから、糀のこと、味噌のこと、発酵のことなどを改めて調べたり、教えてもらったりするようになりました。味噌の効能や自分で手作りすることがとてもいいことなどを改めて知り、発酵食品、日本の調味料の奥深さを感じています。
味噌にはいろいろな種類があります。ここ高知では米味噌が主流ですが、お隣り愛媛県では麦味噌です。手作り味噌を仕込むようになると、次は麦を、その次は合わせ味噌を、糀の割合を増やしたり塩分を減らしたりと自分の好みの味噌を作っていく楽しみも生まれます。
皆さんも今日をきっかけにいろいろな発酵調味料や手前味噌を楽しんでください。
井上糀店 井上雅恵